anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

妃(ミンビ)暗殺』事件

https://www.facebook.com/100002033333197/posts/pfbid02zYJEPfTiqY8UQRdYrQWWDnj43zPrFYxzM3b3zn5o9y21syQRVwYijQ6YFJJGKpsml/ 情報源としての大新聞をほとんど読まなくなったこともあり、この『閔妃(ミンビ)暗殺』事件に、重要な一次資料が出ていたことも…

酔言  9

酔言 9 (つれづれ 改) 平和主義と、表現の自由あるいは個人の自由が衝突することがあるだろうか?もしあるとしたら、それはどういう場合であろうか?この二つが難なく共存していれば言うことはない。しかし、何事であれ複数の価値は衝突することが多い。そし…

アムステルダム 2 (17)

病院の外に出ると、一と月ぶりのパリの街は思っていたよりもまばゆく輝いていた。それに病み上がりの者には、どの街も美しく見えるものだ。けたたましくクラクションを鳴らして走り去る車さえも微笑ましかった。しかし、私には元々行く場所もなく、振り出し…

酔言 1

酔言 1 今日も冷たい雨に作業着を濡らして、雨脚がアスファルトを無造作に跳ねあがる帰り道を、不器用に傘を片手にさしながら自転車をこいできた。裏道には警察官はいなかった。まだあとひと月の残る特養老人ホームの、今日一日の設備管理を終えた。寒い日で…

アムステルダム 2 (11)

もちろんこの私が迫害されて、この街に流れ着いたわけではない。しかし、パリでアムステルダムに繋がることになる、手痛い災難に遭遇した一旅行者だった。共産党下だったシベリア鉄道を乗り継ぎフィンランドに入ると、そのまま気の向くままに南下してイタリ…

軌道工の唄 (18)

私達の細った影が軌道の上に長く伸びていました。レールを繫ぎとめている枕木は、まるで地面に倒されてその上り勾配を長大に続く梯子のように、緩やかな傾斜の中に浮き上がっておりました。不思議なことに、歩き始めてタンパ撞きに戻れば、この身を削られる…

アムステルダム 2 (13)

あと、2、3時間もすれば北へ向かう始発の列車が来るはずだった。やはり疲れていたのだろう、寒さもあって、うとうととしているうちに、ふと隣の人間に肩を揺すられて起こされた。その手にはサンドイッチと缶コーヒーが握られており、私に向かって差し出され…

松沢日記 31

その理知的で端正な背広の似合う人はいつも、朝早く、我々通勤人が大勢通り過ぎて行く傍を、火ばさみとビニールの回収袋を抱えて、歩道に落ちている紙屑やら空缶をそそくさと拾い集めていた。駅から吐き出されて行く通勤客の流れは途絶えることがなかった。…

霊魂

『亡くなった人の気配はあたたかい・・』 先日、街の古本屋で買った百均本、瀬戸内寂聴と美輪明宏の 『ぴんぽんぱんふたり話』 集英社を一気に読んでしまった。二人とも、特に美輪明宏は生前の三島由紀夫とは、彼自らの言葉に従えば「入魂し合った仲」なのだ…

三島由紀夫、遊就館

三島由紀夫の文学的表現の豊穣さは圧倒的だ。散文で書かれたイメージの喚起力がこれほどまでに冴えて、私を酩酊させる作家はそういないのではないか。時にはずいぶんとあざといと感じる文章もないではないが、やはりこれは日本語表現による到達した一つの極…

アムステルダム 2 (8)

北ヨーロッパのつるべ落としにやって来る、透き通るような秋の美しさは言うに及ばないが、暗く厳しい冬の寒さがようやく解けて、春の夕暮れ時の、陽の翳りはじめたアムステルダムの街もまた夢のように美しかった。運河に沿った石畳の街燈にぽっと火が灯ると…

アムステルダム 2 (9)

私は仕事前のいっ時を、よく運河沿いの仕事場に近いパブに座って、こうしてあたりがすっかり暗くなるまで、街の表情や通り過ぎて行く人々を、ただぼんやりと眺めていた。たまたまシベリア鉄道を陸伝いにここまでやって来て、ふと遥かな極東の日本を思えば、…

アムステルダム 2 (21)

ある時、元ビートルズのあのリンゴスターが、女優らしき美しい女性三人と、ふらりと予約もなく店に訪れたことがあった。その辺りの外国人とは違って、フィヨルドのように静かな深く碧い眼をして、注文に来たウエイターの私を見つめた。私はジョンが好きで彼…

米軍基地 人物点描(6)

Eは職場の最古参であった。古狸と言ってもいい。齢七十才、浅黒く精悍な表情は、まるで日に焼けた炭焼き小屋の親爺のようだった。この年で退職の予定だったが、本人には納得がいかないようだった。ぶつぶつと首になることの不満を、私たちに言い続けていた…

ボイラー

ボイラーメンテ ボイラーはその鋼鉄の図体が、ある規模になると年に一回、性能検査といって、必ず国の法定の技術検査を受けることになっている。その為には、前もって傷んだ部品の交換や、本体の清掃を済ませておいて、大概は、国に委託されたボイラー協会か…

義母4

義母 4 同居の義母、ちーちゃんこと千鳥さんは95才、朝早く私が起きると、家の狭い廊下のフローリングに大小便が点々と落ちていて、朝一番、その点検と、後始末から私の一日が始まる。いくら言っても紙おむつをはいて寝ることを嫌がるので、そういうことにな…

広尾界隈

地下鉄広尾駅を地上に上がったところの交差点を、そのまま東の方角に少し歩くと、南部坂下という地名にさしかかる。江戸時代、このあたりには盛岡藩主南部美濃守の下屋敷があったという。坂は険しいながらも見通しが効き、五分も歩けば登りはすぐに尽きる。…

ほむら

ほむら 彼との逢瀬はいつも夢のように過ぎ去ってしまう。密(みそ)かごとには違いはないが、あんなにも会いたくて待ち遠しかった、喜びの頂に向かって待ち焦がれる長い煩悶の日々が、たった一夜で跡形もなく流れ去り、こうしてまた、けして実ることのない未来…

大吟醸

死んだ父の納骨が終わって、一連の葬祭行事にもようやく一区切りがついた。先週は東京~札幌~大阪と骨箱を抱えながら、日本列島を縦に長距離移動したことになる。父も納まるところに納まって安心したことだろう。先祖のいる遠い幽所の深みから流れでる因果…

松沢日記 19

それは地上では人目につくことも許されず、しかも地の底にあられもない忌避の姿でうち沈んでいた。原形を保つ猶予さえとうに過ぎてしまった人間の排泄物は、我々に有無を言わせない生々しい迫力がある。私たちの肉体から吐き出されたこの崩れ堕ちた腐臭の流…

アムステルダム 2 (23)

私は日本人のまずもって他者ありきの傾向、生きることの意味のほとんどを、他者との関係性に汲み上げるそのあり方、あるいはそうした他者との比較対照をベースに据える日常の構築、またそこから無意識に発症してくる集団的な躁・鬱状態を、すぐ間近で見せら…

浄閑寺

勤めている店の内輪話を長々と聞かされたあと、ちょっとした無言が私たちを閉ざした。目前のマンションの蛍光灯がまたたき始めたガラス窓に、咲きかけた牡丹の花の、垣根越しに枝のゆれる姿が浮き上がった。夏越しに備えた水苔がその地面を青々と覆っている…

米軍基地、人物点描 (2)

最初から、Wは複雑な人間に私の目には映った。如才ないという言葉がよく似合う都会人で、陽気でしかも愛想がとてもよかった。彼が人の輪に入ると、矢継ぎ早に世情の話題を提供して周囲をほっとかない。だが、私の彼の最初の印象はだいぶ違っていた。あれこ…

毛がに

蟹を食べれば人をして沈黙させる。磯の香りを漂せる焼き蟹は、とくに夢のように美味いが、茹で蟹もそうそう負けたものでもない。そういえば、皆が口をつぐん黙々と、小さなテーブルを囲んで一心不乱に蟹を食べるということも、ずいぶんとご無沙汰してしまっ…

米軍基地、人物点描 (4)

まるで彼の運転する幅広のタイヤは地面に吸いついているようだった。頭を上げることを禁じられて、匍匐前進を強いられている兵士のようでもあった。それでもMPたちの乗るジープにはそんなことはなかった。なぜならここは自由自在の彼らの庭であったのだ。私…

「狂桜」

拝啓貴女(あなた)のお顔を拝見できなくなって随分と久しく、月日だけは徒らに流れて行きました。それでもその叶わぬ悲しみが、今の今まで、貴女に偶然出会えた喜びの、色褪せることには少しもなりませんでした。今年でもう幾度になりましょう、また桜の花咲…

軌道工の唄 (11)

時が熟しつつ、地の底にみつる遍満の力に押しつぶされて、ふたたび地上に生まれ出ずることの突拍子のなさを体現している鉱物達がいます。あるものは妖しく気を発し、その姿を不本意にも私達に見られることで、自らの体内に結晶化させた瑠璃色の時の封印を、…

軌道工の唄(19)

麓に近づくと、匂うはずのないあちこちに花の香りが立ちました。周りを見ても軌道の周囲に杉林が鬱々と連なり、その下藪に咲く可憐で小さな露草の花が所々に見えているだけなのです。ふと、白檀にも似たその香りが、この街で死んだ者達の、魂の放つ香りにも…

酔言 4

春は立ち 想いめぐるは こころほぐれて おりふしの 君と結びし 八重の言の葉 今はかぎりと あぶみかけたし 君のこころに あだし野に 咲くあだ花と 知りつつも 枯らすまじきと 息を吹きかけ 謳い途絶えし 黒花の艶やかさ 墨色めずるは 天下の誉れ ついの棲み…

酔言 8

ずいぶんと久しぶりのリムジンバスだった。羽田から郊外の調布までの約一時間、運賃は少し高めだったが嵩張る荷物を両手に抱えて、ここ数日、旅行キャンペーンに煽られた帰省客の溢れる都心の私鉄に、どうしても乗る気にはなれなかった。ただでさえ日祭日の…