anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

軌道工の唄 (18)

 私達の細った影が軌道の上に長く伸びていました。レールを繫ぎとめている枕木は、まるで地面に倒されてその上り勾配を長大に続く梯子のように、緩やかな傾斜の中に浮き上がっておりました。不思議なことに、歩き始めてタンパ撞きに戻れば、この身を削られるような夕闇迫る寂寥の中にあって、私といえば、目の前のレールの上をとぼとぼとどこまでも、そしていつまでも歩いていたかったのかもしれないと、今は本当に思うのです。

それは目的もなく、計らい事や人間の賢しらからは遠く離れ、こうしてただ前に進むこと以外に気にかけることも、何かに思い入れることもなく、過去にも未来にも囚われることもなく、この途轍もない身の引き締まる単調さに、それでもその単調さが力強く律動する果てのないこうした反復に、この身をいつ迄も浸していたかったのだと思うのです。