anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (16)

 2・4勤務、長い拘束時間の道すがら、時には楽しみがないわけではなかった。塞がりそうなまぶたに難義をしながらも、私たちにはかなりの、自称自由時間が待っていた。深夜、日付がようやく変わろうとする頃、建物には人の出入りもすっかりなくなって、昼間とは様変わりの空間になっていた。そして日を跨げば、施設全体が無人の機械警備に託されるのである。各所のセンサーから汲み上げられてきた警報は、この時からすべて他社のセキュリティサーバーとつながることになっていた。だから私たちはいつも時計が翌日を刻んだ瞬間に、ほっと息を撫で下ろした。

 ここからの館内の異状は、現場の私たちを迂回して、はるか遠くのセキュリティセンターより電話連絡されることになっていた。深夜の日めくりの儀式は大きい。翌日が開けるとその場の部屋の雰囲気が一変した。警備の一次責任からのすみやかな解放に安堵するのである。その後、私たちの拘束は変わらないが、いわゆる待機状態に入ることになった。待機は休憩時間と美麗句に言い換えられて、我々日雇い警備員には不当にもその間の賃金が除外された。それは夜気も力を失くしてしまう頃、そろそろ東の空の山影の頂きに薄明りが淡く染まり始めるまでのしばらくの間、拘束が解かれることなく無給は続いた。警備室のしたたかな連中は割り切って、毎夜、アルコールで喉を潤し始めた。