anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

2022-12-10から1日間の記事一覧

ガードマン (8)

その頃の私といえば、雀の涙ほどのお給金の支給日を首を長くして待ち、毎日の勤務時間がただ早く過ぎ去って行くことだけを心から望んでいた。長い間、日雇いにはなんの保障もなかった。周囲の何処をさがしても、希望と呼べるようなものは何も見出せないよう…

ガードマン (7)

腐れ警備員、当時私達は自分たちのことをそう呼び合っていた。ここには自嘲の響きすらなかった。職業に貴賎はないというがそんな事を真(ま)に受ける仲間は一人もいなかったのだ。虐げられたこの世界は私たちの吸う吐く息そものの臭いがして、毎日、鉛色にし…

ガードマン (6)

警備員としての長い一日は、観葉植物の静寂さと似ているような気がした。ほどよい薄日の下で声も立てず、陽の光の傾きにただかしらを合わせる観葉植物の呑気さ。はからずもどちらも見られることでその存在価値を十分に示すしかない消極性。そして単調な一日…

ガードマン (5)

瓜二つの双子のように、いかなる時も私の影身に添ったもう一人の内なる警備員に、私という人間を骨の髄まで知らしめられたと、今も頑なに信じている。それは優しい無関心の世界で、安らかな息を吐き続けることを覚えたのだった。 この世界とは、私にとってた…

ガードマン (4)

天井裏の配管に水の流れていく音が聞こえた。いや、もしかしたら鼠の走る足音だったかもしれない。ふうっと、私をささえていた床がそのまま垂直落下したように感じて目が覚めた。目は覚めたがそこは夢の続きのような気もした。なぜなら部屋の外には壁一枚を…