anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (4)

天井裏の配管に水の流れていく音が聞こえた。いや、もしかしたら鼠の走る足音だったかもしれない。ふうっと、私をささえていた床がそのまま垂直落下したように感じて目が覚めた。目は覚めたがそこは夢の続きのような気もした。なぜなら部屋の外には壁一枚を隔てて、声なきものの声が押し寄せているようにも感じられたからだ。私は息を殺したまま狭い小部屋の内側で、あいかわらず張りつめていた。

 壁に伝わる暗い破目が微かに動いた。忘れられて色の褪せたカレンダーがそのひび割れの様子を途中で塞いでいたが、クライシスの裂け目のように壁の破目は徐々に広がり、色違いの妖しい花がいくらでも、その暗い亀裂から次から次と私の頭上に舞い降りてきた。花の匂いに私の神経は苛立ち、むせ返りそうになった。嘘か真か、そこはまさに隙間なく満身の虚実の世界であったのだ。