anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (6)

 警備員としての長い一日は、観葉植物の静寂さと似ているような気がした。ほどよい薄日の下で声も立てず、陽の光の傾きにただかしらを合わせる観葉植物の呑気さ。はからずもどちらも見られることでその存在価値を十分に示すしかない消極性。そして単調な一日のサイクルの中で、自ずからの時の創造を禁止された生の反復性。

 途切れなく目の前の道行く通行人を、受付口にひょっこりと顔を出す来客人を眺め、地下パーキング場に下りていく坂道をひっきりなしに出入りする車両を監視し、あるいは時には校門の脇に立つ無表情な私と、夕方の挨拶を交わす定時制高校の生徒達を、気のなさそうにただ眺め続けているだけが私の人生だった。

 それでも私は十分に幸福ではなかったが、おそらく不幸でもなかった。淡い灰色の空間の中で時を食むことだけに没頭できたのだ。なぜなら私の意識が変わらなければ世界など意味をなさないだろうと、心から信じていたからだった。そして人生に対するそうしたその後の無為のスタンスは、その時すでに決まってしまっていたのだった。