anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (7)

 腐れ警備員、当時私達は自分たちのことをそう呼び合っていた。ここには自嘲の響きすらなかった。職業に貴賎はないというがそんな事を真(ま)に受ける仲間は一人もいなかったのだ。虐げられたこの世界は私たちの吸う吐く息そものの臭いがして、毎日、鉛色にしか見えない低い空の下、腹の出た案山子のように、各地の工事現場やビルの玄関で無表情に突っ立っていた。そうしてそのまま立ち腐れしそうな私たちは皆、水耕栽培の青白い植物の、見栄えはいいが同じ透いた表情をしていた。私たちに肌の下に隠せるものなどありようがなかった。

 しかし腐った果実は大地に落ちると、すぐに溶けて流れてしまう。立派な警備服の中の私達だって、実は今にも自壊の果てに崩れて、ただれた果肉のように流れ出しそうだったのだ。しかもその流れていく先といえば、こうして今も立哨する足もとの、黴臭い口を開けて冷たい舌をだす、暗い側溝にしかないように思えた。