anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (26)

 そうして同僚たちとはこんな風に、嫌でもこの狭い空間で何年かを過ごせば、大概のことは語り尽くすことになってしまう。思い返せば、私はこの職場で、何人もの話し相手に奇跡のように恵まれた。しかもその多くは私よりも長く生きた者達であった。ということは、私は期せずして、私の窺い知れない他者のもつ経験という宝の山に巡り合ったことになる。そして私の生まれながらの、このどうしようもない虚無感は、彼らの存在に少しずつ癒されていった。

勤務最終日の今夜、白状すれば、今、あれこれと思い出しては、共に働いた警備員である同僚達の姿に私の目頭が熱くなってくる。長い間、胸の底に陰にも陽にも思い出は沈澱して、家族のような各人への私の思い入れは、今更のように忘れられない人影となって脳裏に浮かんでくる。社会の底辺で生きていた私たちは、お互いにたいした利害関係もなく、それぞれが独立して溜息をついていたが、それでも偶然同じ時間を共有したという事実を、私はけして忘れはしないだろう。