anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (27)

ガードマン (27)

例えば、地方有力議員の元選挙参謀でありながら、生業のダンスホール経営の失敗後、秋田から上京して様々な職を経たが、結局、失敗続きで警備員に流れ着いた任侠気質のO氏。

 あるいは、バルブの頃、絶頂期の西武百貨店の専属広告デザイナーであったR氏。彼は途中から、その商業主義に反発して百貨店を敢えて辞し、独力で版画制作を試みるが、バブル崩壊ですっかり買い手もなくなり、そのまま警備員になって、現在も売れない創作を続けている。ビエンナーレ版画部門の受賞者でもあった。

 また、冬には長野のスキー場のインストラクターをしながら、雪が融けると警備員として麓に出稼ぎに下りてくる。車内に入れば山小屋の臭いがそのままに、家財道具や荷物だらけのおんぼろ常用車で、春が過ぎると我々のいる下界に雪焼けした笑顔で、季節工のように降りてきたA氏。

 さらに、元上場企業の労務畑を長く経験し、一見穏やかな紳士に見えるが、実はサラ金まで手を染め、挙句に自己破産に瀕して警備員に成り下がったギャンブル狂のK氏。そして、10年近い警備員のかたわら、民間建築会社でアルバイトの図面を引き、刻苦煩悶しながらも一級建築士を目指している、もし来年が駄目なら死ぬしかないと、痛々しい中年のT氏・・等々。

 皆、余りにも長くこの職場で顔を突き合わせてしまった。あるいは最終日の私には生々しく、今日、ここでこうして彼らのことを冷静に、ありのままに書けるかどうかその自信はまったくなく、やはり躊躇してしまうのだった。