anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (12)

 どういうわけかこの警備の世界、一度その釜の飯を食うとなかなか足を洗えないものだった。足を踏み入れるときはなるほど気楽なものだ。日銭を稼ぐのに慣れた者には、新聞やチラシに載ったたくさんの警備員の求人広告はいつも魅力的で、ありがたいものだった。私の年齢や経験、資格などは一切必要がなかったからだ。だが、一旦足を踏み入れれば、この世界から這い出るにはよほどの努力がいる。まるで負債のいや増すサラ金の世界ではないかと、それは警備員になって初めて分かったことでもあった。

 ぬる湯に浸した冷たい両足を、湯舟から引き上げるのにはかなりの決心がいるのだ。外の冷たい外気にわざわざ温まった足を晒す必要がどこにあるのだろうか?私のように人生に目的もなければ意欲もありようがない者には、これで十分ではないか?曲がりなりにも、仮面をつけた私を世間は許してくれる。これ以上になんの不満があろうか。それに下萌えの警備業の磁場に我が身を晒していれば、いつかはその頼りない底の磁力に導かれて、もしかしたらいいこともあるかもしれない。