anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (13)

 職場の連中を眺めたって、警備員をやりたくてこの世界に入ってきた奴は一人もいないにきまっている。興味津々、我が身にときめくものに誘われて、あるいは他人にそそのかされてここに流れてきたわけでもなく、皆、なんとなくその場しのぎに立ち寄って、お茶を濁しているにすぎない風なのだ。片足はいつでも外を向いている、そうした気やすさが警備業であり、一歩も二歩も自分を突き放して、へりくだったところにしかこの世界では息をつげない。気がつけばいつの間にか歳をとり、知らないうちに心も姿も萎えている。澱んだ水に我身を長く浸してしまえば、思いもかけず知ってしまったこの気やすさと、大概、同僚を見ていると、そんな筋書きが私には見えてくる。

 この私だって、最初あんなに嫌だった派手なモールのついた厳めしい警備服と、馬鹿でかいつばの赤い線が入った制帽が、今では学生服のようにしっくりと我が身に馴染んでしまっているのだ。しかもこの職場では、私が一番この警備服が似合っていると、有難くない評価まで頂戴している始末だ。どんなことにも慣れてしまう生き物、それが人間の究極の定義であれば、なるほど私を見れば、まさに正しいことがよくわかるというものだ。