anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (18)

 結局、私はいつの間にかずるずると、六、七年を警備員として過ごすことになった。自分から何かを動かしたり、生み出したりするのではなく、もっともそんなことはまっびらごめんであったのだが、何も起こさせないことに、たとえば盗難や火事や不測の事故が起こらないように、身体や弱い頭を使ってきたのだった。警備とは委託された環境に別段の異常がないこと、委ねられた現状をそのままに保つことが、一番に求められていることであった。これが他律的で無為な私には嘘がなかった。そして意志ある自律は、無為の行きつく涯に存在するはずであった。

 しかし、それには末端の警備員が兵隊の気質を持ち、自分勝手な想像力にはあぶみを掛けて、命令以外の余計なことは一切しない、これが警備員にはとても大事なことであった。余計なことを敢えてしなければ、本当の生存競争には勝てない、この弱肉強食の一般社会の常識とは、おそらく随分と違う世界であったことだろう。巣篭もりを許さないこの社会に私が生きていく選択肢は少ない。当時、私は精神的にも実際にも、一般社会の落伍者であったから、なんの抵抗もなく、この警備服の秩序ある空間へとすぐに馴染んでいった。