anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (25)

ガードマン (25)

ジャグジー風呂に浸かってほてった身体に、長水路の冷ややかな流水が心地よかった。それでも生温い水の塊がときどき私を包み込み、反転するかと思うと、皮膚を優しく撫でるようにまた流れ去っていった。まるで誰かの温かい手で身体を掴まれては、気まぐれにすぐさま振りほどいていくようだっだ。私は水の中に意思ある者がいるような気がして水中を覗いて見たが、前にも後ろにも、もちろん上も下も、そこには真っ暗で幽暗な奥ゆきが続いているだけだった。私の他は誰もいなかった。

 長水路の底近くを流れている伏流水と水面の表流が複雑に混ざりあって、冷温差のある潮目のような水の流れが起きていた。私はゆっくりと仰向けに泳ぎながら、大きく息を吸ってただ天窓の星空を見て浮かんでいた。暗がりの中で水面の境は皮膚だけが感じていた。四方の闇に包まれて宙ぶらりんの私は、どんどんその肉体を失くしていった。それは液相気相の境目も失われた、平衡感覚を失った漆黒の宇宙空間に、自分の魂がゆらゆらと孤独に浮いているような気がした。それはもしかしたら、遠い母親の胎内の記憶であったのかもしれなかった。