anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (23)

ガードマン (23)

宿直は勤務のローテーションによって、相方の顔ぶれが順次変っていく。ひと月ほどでそれは一巡して、また最初に組んだ同僚と一緒の勤務になる。気が合う同士なら、ほとんどの宿直の夜を盃片手にちょびちょびとやりながら、その仮眠の前のひと時を、お互いの些細な内輪話をして、深夜の時間を過ごすのである。私たちの現場は国際プールのある施設だった。ときには真っ暗になった客用のジャグジー風呂に忍び込み、その星空が見え、高い天窓から射し込む月明かりの淡く泡立つ水面に身を沈めては、缶ビールを片手に語り合うこともあった。

 その小ぢんまりとしたジャグジー風呂は、メインプールの長水路の傍にあった。ひと泳ぎしたスイマーたちが、その冷えた身体を温める為に、湯船に身を沈めるものだった。心地よい気泡が湯槽の底や背中のノズルからひっきりなしに迸り出てくる。目を凝らして泡立つ水を見つめていると、その白い無数の気泡は宇宙の大規模構造にそっくりな編み目模様を描きながら、現れてはすぐ消え、離散してはまた集合し、まるでそれは命ある生き物のように、終わりのない循環運動を私の目の前で繰り返していた。

 そしてそこには驚くことに、極小極大に関わりなく、我々の手の届かない無辺際の完璧さが示現されているようにも思えた。私はそうした動きに見飽きず、缶ビールを片手にただ無心に見つめていた。いつしか、私の存在自体もその循環運動にのみ込まれて、その一部分になって行くような気がしていた。