anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

2022-12-07から1日間の記事一覧

ガードマン (3)

妖しい花の香りが私を寝させなかった。そして瞼を閉じてもその花は消えなかった。天井にぶら下がる電球の傘の背後に、垢染みた共用の布団の足もとに、あるいは鈍い音を立てて回り続ける換気扇の吸込み口に、その花の姿が見え隠れしていた。そうした夜の花園…

ガードマン (2)

頭で考えること、そうした努力は私の生活に不透明さを増すばかりで、何の役にも立ちそうに思えなかった。それに警備員の制服が、したり顔した私自身の脆弱な内密を世間から免罪符のように守ってくれた。私は繭の中の幼虫のように、好きなまま糸を吐いて繭ご…

ガードマン (1)

いったん世知辛いこの世間の海から、希望の光さえ届かない海嶺にまで沈んでしまえば、その頂きに自ずと導かれて、居心地のいい深海の安楽の場所に辿り着けるかもしれなかった。それが私にとってのまさに警備業の世界であった。私は深海魚になるべくしてなっ…