anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

酔言 23

酔言 23

 明日午後の予定、府中職業訓練校で四時間の特別講義(省エネ、脱炭素)のレジュメがやっとできた。都訓練校で唯一のセキュリティ科があるというから、そこの生徒たちの卒業後の志望はいつも教えている生徒たちとは少し違う。クラスには消防設備や警備関係の仕事に就職する生徒が多いと事務係に聞いた。それでも、もともと設備と警備はこのビル管理の世界では同じ屋根の下の仲間同士のようなものである。設備業は元々、警備や清掃の会社が新たな経営拡大のために設備にまで手を伸ばす中小企業が多いことも偶然じゃない。

 レジュメの中身といえば無いよりはマシな程度か。それよりもクラスで現場や労働者の話ができればうれしい。それに短期間で書いたレジュメにも間違いがあるだろう。それにしても、こんな基本的な知識をなぞっただけの文章で、ほぼ3日もかかった。私自身には深い動機があったわけではないが、「地球温暖化」は待ったなしのホットな問題であり、レジュメを準備する間、その影響が政治や経済の広範囲に渡っているのを再認識したのはよかった。

 直近、地球規模で温暖化が進み、目に見えた形で私たちの生活を侵している。私の就いているビル管理でいえば、一年間を通せば仕事量もその重要さも暖房よりも冷房にさらにウエイトがかかってきているのを肌で感じる。地球温暖化が、温室効果ガスによる海洋と大気の環境変化の影響によることはすでに科学的に証明されている。反対派に説得力はもはやないであろう。眞鍋淑郎博士たちが気候モデルのコンピュータ解析でノーベル賞を受賞したのも、昨今、話題になったばかりだ。

 この受賞により世界の金融界や産業界が一気に温暖化対策に真剣になったという。異常気象による災害の保険会社の支払い額は年々増えている。脱炭素が企業の社会的責任というよりは、その温暖化対策に後ろ向きな企業に、株価も上がらず、また投資家からの資金も行かなくなってきたのだ。

 「冷やす」とはいったい何か? 温めるより冷やす方が格段に難しいこともある。人類が火を使うようになって約50万年という。しかし、天然以外で冷やすことができるようになったのはここ100年ちょっとなのだ。現在の物質の蒸発熱を使う冷凍機器は、今後さらにヒートポンプとして効率化が進み、あらゆる場所で熱交換の主役になっていくだろう。それを含めて、面白いのは暖房よりも冷房なのだ。しかも今後、ますます技術的に発展して重要さを増していくのはその冷房の側と思われる。

 社会の脱炭素化や再生エネルギーの勃興で、たくさんのビジネスチャンスも生まれている。現在、戦争を除けば、金儲けはまさにここにありの様相を示しているのではないか。地球温暖化はもともと人類が技術革新や経済発展によってもたらしたものであり、コスト削減や省エネがそれを助長した感もある。皮肉なことに、それがさらに地球規模で莫大な再コストを生み出そうとしているようだ。もういいかげんに「少量消費の最大幸福」へ、私たちの思考も真剣に変えなくてはいけない。

 またどこの国でも、競争の中での新たな腐敗も増長しているのだろう。特に、官公庁主体のプロジェクトや経済活動には利権の臭いが立ちこめる。国が力を入れている洋上風力発電では、政府などが海域を指定し、事業化調査を行なったうえで事業者を公募する、いわゆる「セントラル方式」がとられているが、はたして事業者の公平な入札ができているのだろうか。

1.地球温暖化
 
・18世紀半ばの産業革命以降、化石燃料の大量消費の結果、地球の平均気温が1.1℃上昇。大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度上昇、森林破壊等が原因。 温室効果ガスCO₂(65.2%)、メタン(15.8%)、一酸化二窒素(6.2%)、フロン(2.0%)
現在の上昇ペースが続くと、21世紀中に2℃を超え極端な気候現象(豪雨、台風、干ばつ、海面上昇、海洋酸性化)の懸念。

・太陽エネルギーの3割が地表で反射される。反射率を考慮して「ステファン・ボルツマン黒体放射の法則」から地球温度が算定可能。温室効果ガスは赤外線を吸収し地表に再放射。(CO₂ 0.03%)
地球:15℃ (実測値 地表平均温度)、-18℃ (温室効果なし 地表平均温度)
金星:477℃、-46℃  (92気圧、CO₂96.5%)
火星:-47℃、-57℃  (0,0075気圧、CO₂95.0%)

地球温暖化係数GWP(大気中年数100年、CO₂を1とする)
メタン25、HFCs1430(スプレー)、PFCs7390(半導体製造エッチング、洗浄)、SF₆22800(電気絶縁、ガス変圧器、遮断器、開閉器)

IPCC(国連組織:気候変動に関する政府間パネル)が2022年、「大気、海洋、雪氷圏、及び生物圏に広範囲に急速な変化が起こっている。人間活動が及ぼす温暖化への影響は疑う余地がない」と報告。第6次報告書では5つの気候変動のシナリオ。また、眞鍋淑郎博士等、大気と海洋循環を一体化した気候モデルのコンピューター解析で地球温暖化を証明(ノーベル物理学賞2021)。大気の一次元鉛直温度分布解析。CO₂が二倍になると気温が2.4℃上昇。現在、気候変動三次元コンピューター解析続行。

・過去、10万年で最も温暖だった期間を入れても平均気温上昇は0.2~1.0℃だった。それが人類が化石燃料を使いだした産業革命以降、わずか150年ほどで到達。何も温暖化対策をしないシナリオでは2100年には5℃上昇。GHG排出量少ない場合2℃、非常に少ない場合は(カーボンゼロの場合でも)1.5℃上昇。19世紀後半との比較でもし2℃上昇すると、海洋熱波などの最高温度の日(1回/10年)が5.6倍、干ばつ2.4倍、豪雨1.7倍、大型台風+13%、海面上昇最大1.1mが予想される。高潮、洪水のリスク、サンゴ礁消失(海洋のCO2吸収による酸性化)、南極・グリーンランド氷床消失、永久凍土融解、農作物不作による食糧不足、生態系破壊、疫病等の発生リスク等。

2.国際協調

 ・1988年「IPCC気候変動に関する政府間パネル
  国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって設立。
  各国の科学者が参加し気候変動に関する知見を定期的に公表
・1992年 気候変動枠組条約(UNFCCC)
・1995年 締約国会議(COP) 毎年開催
・1997年 COP3 京都議定書採択 
  温室効果ガス削減目標の初めての法的拘束力。2001年米国離脱、2013年~
  日本、ロシア、カナダ、ニュージーランド不参加
・2015年 COP21 パリ協定 
  平均気温上昇を2℃未満(1.5℃努力目標、後の2018年IPCCによる1.5℃特別報告書)。196か国参加(世界のガス排出量の約86%をカバー、
目標作成、報告、5年更新の義務化、二国間クレジット制度(排出量取引)、現在日本17カ国とパートナー
  先進国資金拠出義務化 
・2020年 菅内閣、「2050年カーボンニュートラル」宣言
  2050年カーボンニュートラル温室効果ガスを2030年までに46%削減
  目標(2013年基準)。

3.カーボンニュートラル

カーボンニュートラルとは、CO₂をはじめとする温室効果ガスの排出量から、森林などによるガス吸収量を差し引いて、大気中への増加分を正味ゼロ(ネットゼロ)にすること。

・CO₂削減の方法としては、⑴化石燃料の大幅削減、⑵省エネによるエネルギー消費削減、⑶再生可能エネルギー導入、⑷CO₂の分離・回収(CCS地中に貯留)隔離、DAC大気からフィルター回収)等がある。

・17世紀、イギリス製鉄に石炭使用、炭鉱に流れ込む地下水をくみ出すのに蒸気機関、石炭運搬に蒸気機関車が発明された。動力に水車から蒸気機関に変わり、鉄の大量生産が可能となった。CO₂の排出量増加。

・石炭燃料は「外燃機関」で燃焼するが熱エネルギーの90%はムダになってしまう。1859年ペンシルバニアで採掘され始めた石油は「内燃機関」で燃やされ、エネルギー効率が上昇、需要が急激に増えた。しかし、コスト面で割安な石炭は、火力発電などで依然として現在のエネルギー発電設備の主流燃料。

・世界の火力発電における燃料割合は、石炭36.4%、天然ガス23.3%、石油3.1%(2019年)。
・日本電力会社の電気料金(基本料金除く)は、現在、1kWh≒20円。2030年の発電単価予想が、石炭12.9円、石油28.9円、LNG13.4円、太陽光14.2円、風力(洋上)32.5円、原子力10.3円、水力11.0円、地熱16.8円

・CO₂排出原単位(g-CO₂/kWh)は、石炭火力943g、石油火力738g、LNG599g、太陽光38g、風力(陸上)26g、原子力19g、地熱13g、水力(マイクロ)23.3g

温室効果ガス排出量は、世界ではエネルギー起源(化石燃料の燃焼など)の排出で64%、日本では84%占める(火力発電33%、中小企業・家庭・車8.9%、大口事務所・運輸14.9%、高炉製鉄12.2%・・)

・発電電力量(日本)2023.3
火力76.2%、水力10.8%、新エネルギー8.7%、原子力8.5%

再生可能エネルギーとは、温室効果ガスを発生しない、資源は枯渇せず使っても再生産されるので無尽蔵と考えられるエネルギー。太陽エネルギーなど。発電量が不安定、設備にコストがかかる。

・CO₂排出量を減らす為の手段として、再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)への転換やエネルギー消費量を削減する機器の省エネが有効となる。電力化、機器の高効率化

・省エネ法による脱炭素化
1979年、「エネルギー使用の合理化に関する法律」制定
オイルショックによりエネルギー使用効率大幅改善必要
特定事業者のエネルギー使用計画、使用状況の報告
1983年改正 前年比エネルギー消費量1%以上削減義務化
1998年改正 トップランナー方式導入(1997年京都議定書)。
2008年改正 ベンチマーク制度(省エネ基準、共通指標)
2023年改正 非化石エネルギー(再生可能エネルギー)対象
電気使用量を電気供給量に合わせて追従させるデマンドレスポンスの実施、報告義務化

4.省エネ化

松沢病院の場合
①照明のLED化、間引き照明、休憩時の消灯
②冷暖房設定温度の緩和(1℃変更で10%の省エネ、環境省)
空調機、ポンプのインバーターによる回転数制御
④蓄熱槽による熱源ピークカット運用(夜間電力)
⑤空調のヒートポンプ導入
太陽光発電(約4%)
⑦電気量消費の時間的平準化
⑧ターボ冷凍機、冷水の設定温度を高くする
⑨ボイラー、熱交配管に断熱カバーを被覆する。
⑩ボイラー燃焼空気比を適正数値(1.2)に近づける。
空調機フィルター清掃(冷4% 暖6%)、排気ファンの停止

・日本、最終エネルギー消費量(実際に消費された量)の4割が冷温熱の熱源に利用される。特に温暖化が冷房の期間とそのエネルギー使用量を増加させている。実際に、データーセンターや放送局、医療施設では、一年中冷房が稼働している。エネルギー使用割合(病院、ホテル)は、冷房32%、厨房23%、給湯12%、暖房11%、動力・照明11%、他6%。

・ルームエアコン (ヒートポンプ)、最近はCOP(成績係数)が5を超える。1kwの電気エネルギーで5kwの冷房能力、6kwの暖房能力がでる。(COP=冷暖房能力/圧縮機消費電力)。これは温熱の場合、薪の5~6倍、電気ヒーターの3倍。燃焼式ボイラーに比べ39%の省エネ、CO₂排出量は32%削減する。また、現在日本で使われている業務用、家庭用のエアコンと給湯器を全てヒートポンプに置き換えると、温室効果ガスの削減は年間総排出量の約10%に当たる。

・室内空調機(エアコン2.2kw)、夏に設定温度を27℃→28℃にした場合(外気31℃、9h/日)、年間電気量30.24kwh、原油換算で7.62Lの省エネになる。CO₂削減量14.8kg。電気料金で820円の節約。冬には設定温度を21℃→20℃にした場合(外気6℃、9h/日)、年間電気量53.08kwh、原油換算13.38Lの省エネ、CO₂削減量25.9kg、電気料金1430円の節約になる。

・ターボ冷凍機、冷水温度を7℃→10℃にすると、エネルギー消費量11%削減する。高効率のポンプ(縦置き型)。凝縮器内の熱交チューブの清掃。冷却塔充填材、配管ストレーナーの清掃。コンデンサ内凝縮温度と冷却水出口温度の差であるLTDの監視。

・照明LEDへの新設工事。一方方向へ発光ダイオードに電圧をかけると素子が発光する。赤、緑、青(1998)の三原色であらゆる色を出せる。寿命が長い(白熱電球の40倍、旧蛍光灯の4倍)。消費電力が少ない(白熱1/6、蛍光灯1/2)。CO₂排出量が少ない。応答時間が短い(蛍光灯は1回点灯すると寿命が1h短くなる、エミッタ消耗)。振動に強い。紫外線、赤外線が少ない。

・蓄熱運転
22:00~8:00までの夜間電力(70%の電気料金)を使い蓄熱槽に熱量を溜める。それを昼間の高負荷時にシフトして放熱する。消費電力量のが(低負荷運転は電力消費が悪化する)、あるいは一日の連続運転可能なため運転効率がよい。氷蓄熱は水蓄熱の5.4倍の熱量がある。

・受水槽、使用水量の減水のため片肺水槽使用へ変更。電極棒による水位制御の調整。

・回転機器のインバーター制御
三相誘導電動機(三相交流)→周波数が決まると回転数が決まる→速度制御ができる→広く使用される。IGBTなどのパワートランジスタをスイッチングし、on/offの間隔を変えて幅の違うパルス波を作る。直流波を細切れにして疑似的な交流波になる。
交流→直流(コンバータ回路、整流)、直流電圧を平滑させる(コンデンサー)、直流→交流(インバーター回路、パルス幅変調)
公式、n=120f/p×(1-s) (f:周波数、p:極数、s:すべり)
流量は回転数に比例、圧力(揚程)は回転数の2乗に比例、駆動力(軸動力)は回転数の3乗に比例する。
例、回転数(流量)を4割落とすと、0.6×0.6×0.6=0.216で軸動力は8割削減される。

・ボイラー燃焼
完全燃焼のため、燃焼空気比の適正化(1.2)。排ガス中のO₂濃度で制御。m=0,21/(0.21-O₂)、排ガス再循環燃焼、二段燃焼、濃淡燃焼。ターンダウン比が広いバーナー使用。

・進相コンデンサーによる力率改善
進み無効電力で遅れ無効電力を相殺して、負荷の皮相電力から無効電力を小さくする。抵抗損失、変圧器コイル損失が低減する。自動力率調整器のない設備は更新が必要