anehako’s diary

ノート代わりの下手な駄文を書き連ねています。書き替えも頻りで、

ガードマン (20)

 それに自らが積極的に何かをして責任が生じることと、何もしなかったことが原因でその責任を受けるのでは、後者の方がうんと割りに合わないだろう。不作為から生じた責任は厳格であるべきなのだ。だから生真面目な警備員にはやはりこの仕事は割に合わない。ある場所の危険の起こる可能性は無限にあり、その無数の可能性に一々対処することは不可能であろう。道半ばの自己満足感、中途半端で良しとする適当さ、そしてなによりも完結不可能な世界といつも相対していると意識することこそが、警備員の心得であるはずであった。

なるほどこれは私の気質に通じるものがあった。常に私の自己満足とは、結果なんぞにはそれほど関わりないものであったのだ。夢だって実現すれば忽ち色褪せてしまう。実現することはたいして重要ではなかったのだ。普通に考えれば、最先端の火災報知機や侵入センサーに幾ら金をかけたって、火事にならなければ、あるいは泥棒に入られなければ、それはまったくの宝の持ち腐れに終わってしまう。この世界、『もしかしたら』という針の穴を見つけ出すような危険探しをたねにして、厖大な想像力の世界を構築しているわけだ。それは悪夢を食らって肥えふとるという獏(ばく)と同じものであろう。おそらく私は生まれてこの方、ずっと貘になりたかったのだと思う。